IP 知的財産としのARM製品。
こう言われても何がなりやらわかりませんが、、、
ARMの製品はデーター処理するMPUとそれに必要な周辺回路および画像・動画処理に必要な回路を高性能でコンパクトに仕上げた回路の情報(Intellectual Property=知的財産)であり、これを買った顧客は契約代金を払えば自分の製品の主要な部分を設計したり、動作確認する必要が無くなり、開発時間を大幅に圧縮する事が出来ます。ハードウェアレイアウトまで出来ている「ハードウエアマクロ」を買えばより一層開発時間を短く出来ます。
中国製の携帯電話はどう作られたのでしょう。数年前の場合
.中国のある携帯電話メーカーは台湾のマクロメディア社の携帯電話用ICを買います。
・マクロメディア社は自社のICを買ってくれる中国の会社に、携帯電話全体の回路図とその部品表(製造メーカーを含む)、
評価ボード、標準ソフトも惜しみなく提供します。
・マクロメディアはソフトウエア開発要員も多く、ユーザーの質問に答えます。
・中国メーカーは、販売先国の通信も度モード、言語への対応やケースや表示部分のロゴを変更すればすぐに携帯電話の生産に入れます。
マクロメディア社はDVDプレヤーから始めて、テレビでも同じような仕組みでICを販売し、携帯電話用ICでも高いシェアをとりました。
このマクロメディア社のデーター処理の部分にARM社の製品が使われています。
今では、中国内にマクロメディアと同等なICを販売する会社が出来てシェアーを高めています。しかし、これら中国企業もMPU部はARM製品を使っています。
携帯電話メーカーはマクロメディア社が提供したソフトウェアを改良して、製品に乗せていますが、中国製の安価なICに切り替えてもその中に使われているMPUがARM製品なら今までのソフトも流用できます。
携帯電話の機能の90%以上は数年前と変わりません。変更したところだけ変更すれば済むなら開発時間は短くて済みます。
重要だが新たな付加価値を付けられないMPUもような部分では、過去に作ったソフトウエアを流用できるARMの物を使う、この辺りを「プラットフォーム」ビジネスと称していると思います。
今では、国内の携帯電話メーカーも今ではこのビジネスモデルをとるところが多いと思います。勿論日本のICメーカーも同様に下に書きます自社製のMPUやそれ専用に開発したソフトウエア資産を捨てさりARMの製品と世界的に圧倒的なシェアを持つ携帯電話・スマホ用のソフトウエアセット(ソフトウェアのプラットフォーム)に置き換えています。
日本の失敗
1.安定した市場
NTTはデジタル携帯電話に関しては世界的にみると先進的な技術を開発しましたが、世界的にみると仲間づくりには失敗しました。
NTTは国内メーカー各社にNTTの技術を使った新製品を開発させる代わりに、其々の会社が維持できるできるだけの利益を生むようバランスを考え各社に発注しました。各社は荒波のない金魚鉢で育ち、技術を磨きました。
2.日本のICメーカーは先行し、ウサギだった。
日本のICメーカーは1980年代の米国のメーカーを追いかけ、あっと言う間に抜き去りました。NEC、東芝、日立、富士通も独自の特徴あるMPUを開発し自社の携帯電話に採用しました。独自のMPUとそれ専用の独自のソフトウエアを改良して対応しました。
国内であってもNTTのシェアを分けてもらえれば食べていけますから、各社が一同団結してより携帯・スマホに使い易いICを作ること、使いやすいソフトを共同で作ることはありませんでした。ましてや通信の世界標準(NTTとは異なるデジタル通信方式)についても共同開発は行われず世界的に見れば小粒な技術で戦おうとしました。
3.ICは一時期大手電機メーカーの儲けの柱でした。
日本の大手電機メーカーは自社に半導体・IC製造部門を持ち、自社製品の重要部分は自社のICを使いました。一般家庭の最終ユーザーが使う目に見える家電製品で使われるICは海外のメーカーも欲しがりますから、シェアーは上がり儲かりました。
当然、ICの外販の値段は自社で使うより高くしないと社内で叱られますし、営業費用も余計にかかるのでICの値段は高くなります。
4.負けの必然
ICの1個辺りの製造コストは生産ラインの最新性と生産規模で決まります。
技術革新は2年に2倍の回路規模になるスピードですから、毎年製造設備を交換したいくらいです。生産設備も回路規模のように加速度的に高価なものになり、工場も3層にするなど大掛かりなものが必要になります。
先行していた日本は従業員と工場を維持するために、改良を重ねますが、どかんと最新設備てんこ盛りの工場とは生産性において歯が立ちません。
元々自社の家電や携帯電話、パソコン向けを中心にICを其々のメーカーが作っていましたから規模はたいしたことはありません。
最新工場でICを大量に作っても、自社では使い切れませんし売れる見込みもありません。
毎月数百万個同じICを作らないと、設備につぎ込んだ資金の回収は難しい。
そこに、共通のソフトで書かれた回路情報IPを組み合わせて大規模ICを設計する手法が導入されました。三星がAppleのノートPC向けのICセットを受注したのが、その象徴に思われます。そこに使われたMPUコアがARMの製品でした。
お茶いかが

江戸時代のからくり人形の現代版