ソフトバンクの孫さんがARMを買ったという。
組み込み型MPUの元祖であり、FPGAやゲートアレイに組み込む最もポピュラーな世界 標準の企業を3.3兆円で買ったとか、、、、
ARMは携帯電話、スマホのほぼ100%に入っているMPUコアのメーカーである。昔、半導体業界で飯を食べてきた私にとって夢のような話である。
ARMとは?
MPUコアのメーカーというものの作っているのは、大規模な半導体ICに組み込まられるられるソフトウエアで書かれた回路情報である。買い手は、三星やApple、日立、東芝、台湾のメディアテック、TSMCそして近年急速に売上を伸ばしとぃる中国のICメーカーです。ICにこの回路情報を使うためにはイニシャルのお金と、ICごとにロイヤリティを払います。
パソコンにはMPUと主要な付属部品を含めたインテルのチップセットが、ほぼ100%使われています。

ARMの製品はこれらと同じような働きをする回路の情報をまとめています。後に書きますがICの高集積化につれてARMの製品の能力も何年か前のインテルの製品と匹敵する処理能力を持つようになりました。
タブレット、スマホ、携帯電話では、インテルの最新の製品ほどの高機能は必要ない代わりに、電話・通信機能が求められます。また、カメラや小さなディスプレィもつけなくてはなりません、もともと携帯機器にはインテルの大きなチップセットを入れることや、これを動かす大きな電池や発熱を和らげるファンをつけるスペースはありませんので、インテルの製品が携帯機器に使われることはありませんでした。
1980年代から、インテルやTI社、モトローラ社などが生産している汎用ICメーカー品を半田付けでつないだものを使う代わりに、携帯電話やプリンター、ゲーム機其々に其々専用のICを作る事が広まりました。
これはICの集積度(中に入れられるトランジスターの数)が技術革新によって2年ごと2倍以上になっている事と大いに関係しています。複数のICを組み合わせて作っていた携帯機器は数個にまとめることが出来るようになったのです。
1970年代に10個程度のICの

集積度は44年の間に10X2の22乗倍(4,194,304倍)=4千万個のトランジスターが入るようになりました。言い換える機能的には少なくとも数百万分の一の大きさになったと言えます。

さて、ARMのMPUコアですが、かっては同様な回路技術で個別性能ではARMを上回る日本製のものもありました。また、インテルも同様の製品を用意したこともありましたが、販売の仕組みや契約の仕方の差もあり、有力な競合会社は無くなり今や独占的な力を持っています。
かっての競合も含めMPU製品はソフトウェアで書かれていますが、売り方としてはソフトウエアで売る方法と部分的なハードウエアとして売る場合とがあります。日本勢やインテルはICという目に見える製品や専用カスタム製品の受注の目玉としました。(注:背広のパターンオーダーのようなイメージ)
最も大きな差
日本勢とインテルなど既に力のあったICメーカーはIBMや家電メーカー、通信機メーカーに「IC」を売ろうとした。
ARMは上記を含むICメーカーに売った。80年代日本が浮かれまくっている間に、韓国、台湾、中国の順に国策的な支援の下に巨額な投資をして日米の最新製造装置を備えたICメーカーが誕生し大規模回路ICの生産能力ではあっと言う間に抜き去って行った。これらの新興メーカーは有り余る生産能力を活用するために競ってARMの技術を導入。Apple製品の全てにARM技術が使われる事態もうまれた。

ソフトウエアの状態で売るには、そのMPUのソフトを利用するための道具(ワークステーションあるいはPC用のソフト)が必要であり、これらを提供するメーカーがあるか等広範な外部の協力者が必要です。
これらの協力者にとって、売れてるMPU向けに製品を用意したほうが効率よくお金になりますので、2番手以降のICねーカーに協力するのは敬遠されました。「1番でなければ意味がない。」世界があるのです。
使うための道具、プログラム言語、プログラムライブラリ、動作シュミレーターなどがそろっているものを使う=ARMを使うことになっています。

ARMには契約にもよりますが1製品ごとに5円をとっても年間販売15億台なら75億円が得られ、年率20%アップで増えていきます。1700億円の売上で税引後利益が500億円以上もあるソフトウエアビジネスモデルの会社です。
車の場合台数は携帯電話に及びませんが、ナビ、エンジン制御、自動運転、エアコンなど1台に相当な数が使われていきます。
この分野では、日立などの国産勢も実績を持っていますが、今後異業種からの参入にもあり、ARMベースのカスタムICに置き換わって行くと思われます。

ARM以外のものに置き換えるには、製品とソフトウエアの検証を最初からやらなければなりません。40年世界中で使われ安定性が確認されたソフトウエアを使いたい、使わざるを得ない。検証済みのソフト・ハード資産を使う=プラットフォームとしてARMを使うのは前提となります。
これが、孫さんが言っている日本で出来なかったプラットフォーム技術との発言である。

トヨタのHVはアメリカカリフォルニア州の「排気ガスゼロ車(ZEV)」から外されたのも、もちろん排ガス「0」ではありませんが、車のプラットフォームとしての位置づけを日本メーカーに与えたくない意識があったと思われます。
この意味でも孫さんが中国のネット販売会社、フィンランドと日本のゲーム会社の株式を売って、多くの産業のプラットフォームを手にした意義は大きいと思います。

17~18年前サンフランシスコの小さなビルで壁に大きな穴を開けて沢山のイーサネットケーブルを引き回していたWebサービスの会社に技術導入の話しに行ったところ、既に孫さんが来ていたと聞きました。
こんな小さなところにも来るんだと驚いたものでした。