下流層エネルギー
トランプ大統領
鈴木貴博百年コンサルティング代表
アメリカの人口の65%が白人で、その90%が下流層に転落したことを嘆いている。
65%と90%をかけ算してみるとわかるが、要するに約半数のアメリカ人が怒れるプアな白人層で、この層がトランプ候補の一番の支持者だったというのが、今回の選挙結果の構造だ。と書いている。
日本でのTVの普及期、ルーシーショーや奥さまは魔女でアメリカの中流家庭の豊かな暮らしぶりを見て驚いたものである。知り合いになった米国大企業でコントローラをしていたアメリカ人Billさんの暮らしも豊かなものだった。
一方、サンフランシスコの空港で女性が持つバッグに手を添えて、後でチップをもらおうとしている二人の白人。
オースチンの郊外に並ぶトレラーハウス。朽ちそうな家のベランダで夕日を眺める黒人を見て、豊かな国の影の面を見た気がした事がある。
いまや、正しく働けば報われると信じてきたプロテスタントは農業や鉱業から工業に従事する業界が変わるも、まじめに努力し中流の生活を過ごしてきた。
環境として、農業の機械化、コストの安い農産物と加工品の輸入があり、工業製品も強いドルを背景に海外で生産されるものを輸入している。
すでに資金を持つ上流者にとってどこで生産しても販売や輸送があり、また直接的に海外企業へも投資し、配当やキャピタルゲインを得ることが出来る。 アメリカの東側にはNYを中心に、数字を扱うことで富を得る富豪がいる。
西側には新しいアイデアや金になるコンテンツを生む才能のある者が集まる。こららの才能も富豪による投資を集め、短い期間内に事業化する。この高速レース場に参加するレーサーとその競技勝者に貴賓席に座り続けて賭けている者にとって、余剰資金を数倍にもして興奮し楽しんでいる。
農業・鉱業・製造業のように勃興の推移に合わせながらも、まじめに働き毎夕や日曜に感謝の祈りを欠かさなかった人々の多くは職を失っている。
またなけなしの退職資金や貯金を有利だというコマーシャルに乗って運用し、結局はウォール街の禿鷹にむしりとられてしまった。
成功できないのは、努力が足りないとされる面もあるかもしれない。しかし、一度下流層に落ち込んだ家庭の子女が高等教育を受けることは極めて難しい。
シリコンバレーでマネージャーをしていた友人は子供の学費捻出のため、不利な条件で自社株ストックオプションンを行使し、子供の就学費用を工面した。と涙を浮かべて言っていた。 恐らく自分の老後を過ごすための数少ない希望だったと思う。
オースチンからサンディエゴに移動する飛行機内で体の小さな10代の男の子と隣り合わせた。サンディエゴの海軍に入ると言っていた。 親や自分が中流であった人が下流層に落ち込む、その子供らは幼少期は中流に育つも、社会に出るころには下流層からキャリアをスタートしなければならない。
彼らは高等教育を受けた難民やメキシコでアメリカの最低賃金の30%で働いていた不法移民と職を奪い合うことになる。
自分の親が持っていた権利と環境を持てなくなることが、父や母の努力とは無関係に余儀なくされる。子供のころ見下していた地域に住む人たちに比べても厳しい環境に追い込まれる人も多く、憤りを抱え込んでいる人が少なくないのではないか。 耳あたりの良い言葉に1票を捧げることを止める手立てはない。
日本でも正規社員として働き、年金と健康保険料を支払わない人にはほとんどの保証はない。しかし、好んで非正規社員を選択したわけではない。そのまま10年20年過ぎると期間機会損失を埋めることは難しく、その子供に高等教育を与えることは途方もなく難しい。
多くの子供にとって均等な教育の機会を与えられてはいない。 教育を受けていない両親を持つ子供が高等教育を受けるには、資金と学ぶ環境において家庭外からの助けが必要になると思う。
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