日経平均株価は15年ぶりの高値をつけました。15年前に比べると欧米の株価は数倍になっているそうですから、いかにも日本市場は厳しい状態だったのでしょう。
もっとも、円はこの1年で20~30%安くなっているので、日経平均株価をドルで評価した場合、上がったというレベルではないでしょう。
今後に期待したいところです。
私といえば、株については昨年はなんとかプラスで終わりましたが、今年に入り1月は、裏目の連続で不調、2月になんとか水面に浮かんできた状態です。
このごろの高値は、やはり異次元の金融緩和、バズーカ追加策による資金投入により、株式、不動産にお金が流れ込んだためでしょう。
春節に入り、中国、香港、台湾から観光客が円安の日本に爆買い買い物ツアーに来ているようです。地方空港やフェリーの入る港の商店街やコンビにでも買占められる商品があるそうですし、TVでは大トロ、蟹、神戸牛、ウニに家族で舌鼓をうつ姿も放映されています。ちょっと悔しい・羨ましい気持ちもありますが日本で沢山お金を使って欲しいと思います。
大手企業では輸出関連を中心に従業員給料のベースアップも予定しているようですし、ファストフード・介護施設・居酒屋チェーンの人手不足も見られ、その解消策として正規社員化も見られるように「明るい」兆しが見えてきたようです。
一方、我々年金をあてにする世代にとって「明るい」のはちょっと「不安な」兆しでもあります。
実際、ガソリン・灯油を除く、生活必需品は2%というレベルではない率で値上がりしています。物の値段が上がる=お金の価値が下がるというのは、入ってくる額が決まっている年金をあてにする生活者には、だんだん厳しい環境になって行くと立ち竦みます。

読書感想
浜田宏一・安達誠司共著「世界が日本経済をうらやむ日」
アベノミクスの理論的指導者であり、米国の経済危機を脱したFRB議長バーナキン と副議長イエレン(現議長)同様イェール学派(トービン教授門下)である。
安達氏は投資の世界で実践されているかたとある。
とても面白く読みました。
興味を持った内容。
第一の矢:金融政策について
◎黒田日銀総裁と現委員と白川前総裁と前委員の主張の違いは250年にわたる経済学者論争の表れである。
白1:貨幣は需要と供給の交換の際の中間媒体であり、貨幣の増減は実体経済に影響を与えない(古典学派・新古典学派である白川組)
白2:金利がゼロになった時点で、貨幣を増刷しても市場に出回らない。
黒1:固定相場では、為替の変動が無いので貨幣の増減による影響はほとんど無いといえるが、変動相場制の現在、貨幣の増減は各国通貨の需要供給に直接相対的な影響を与える。(イェール学派=浜田氏)
黒2:市場で銀行が持っている国債を日銀が買い込むことで現金が銀行に入り、銀行は運用のため貸し出しを行うので市中にお金が回りだす。

第3の矢:成長戦略について
白:日本は人口減少であり供給力が減少しているのでデフレになっているので、金融緩和政策では悪いインフレを誘うだけだ。
黒:ドイツを含め人口が減っている国は10以上あるが、デフレになっているのは日本だけであり、白説が正当とは言えない。
現状のデフレは日本の総供給力の限界によるものではなく供給力と需要のギャップによるデフレなので需要を刺激する=インフレになると考えると需要は増え、総供給量に需要が達するまでは悪いインフレにはならない。
白:成長戦略と費用削減、財政の健全化が必要で消費税増による歳入をアップする必要がある。
黒:総供給力を増加させる戦略=成長戦略は重要であるが今時点では景気浮揚に効果はない。(需給ギャップが広がれば値下げ競争に拍車がかかりデフレが進む)
需要者である政府・企業・個人の中で政府の支出が減るのは今は厳しい、よって第2の矢を先に放ち(財政策)、効果を確認しつつ第3の矢(成長戦略)を射る。
消費税3%→5%アップ時から目に見えて企業税収は減ったため、歳入総額は逆に大きく落ち込んでいる。消費税率のアップは企業と個人の消費・需要を減らすので歳入自体は減額してしまう。

激しい対立の立ち位置について
白派:デフレで物価が下がれば、年功序列のサラリーマンなど多くの人にとって利益になる。
黒派:物価下落以上に給料は減っている。
失業率は増加している。自殺者が増えた。非正規社員が増加している。
お金の価値が相対的に上がるので企業の内部留保が増えた。(給料をあげずに貯める)
白派:デフレ下で銀行は国債を買って保持すれば低い利率+デフレ率を稼げた。リスク無く儲けられるこの状態を続けたい。
(この仕事に従事して利益をだした人は社内で偉くなっているし、引き続き国債の買い付けが上手く行くよう、関連機関との友好関係作りに努めている)
黒派:金融緩和に反対する人は国債によるビジネスに従事もしくは関与している。