半導体不足3
日本の半導体メーカーが相対的に埋没していった理由を上げてきました。
国内の市場でそこそこ稼げたので、自らは世界標準を作れずフォーマットフォロワーになった、そして不況に耐えて投資を続けることが出来なかった。
最新の半導体工場建設には1兆円かかるとも言われている。数年ごとに最新工場を建て続けないと先端技術製品を提供できない。
工場は3層で処理する部屋は中間層にあり、フィルターで浄化された空気が上の層から出され、作業層の金属格子の床から下の層に常に流れ循環している。
作業層は外気より加圧しホコリの侵入を防いでいる。
作業層の天井にはモノレール線路が吊り下げられ、ウエハーが24もしくは30枚入ったロットボックスがかなりのスピードで工程間を移動している。
生産には停電しない安定した電気と各工程ごとに洗浄するので大量の水が必要。
輸送のために空港が近いことも重要、作業員の確保も欠かせない。
酒の旨い地方の水はミネラルが多く半導体には適さず、焼酎の産地の方が良いという冗談もあった。
半導体は最新設備を駆使しないと作れないが、どの設備も2年ごとに最新微細化技術に対応できるよう求められ、最新半導体メーカと製造設備メーカーはタッグを組んで最新技術の開発を継続し、Win-Winの二人三脚の関係を保っている。
最新技術製品を作らない半導体メーカーには最新設備情報が届かない。 逆に、設備メーカーは折角開発した製造設備を、世界中どこであろうと新鋭工場を建設する半導体メーカーに使用方法教育を含め、十分な利益を確保し売り込んでいる。
半導体にはオリンピックサイクルと言われるような、周期4年の好不況の波があり、多くの半導体メーカは不況時の負担に耐えられず、莫大な投資を続けられず、敗退していった。
設備メーカーの好不況の波は半導体そのものの景気の波より10倍激しいと言われ、多くのメーカーが撤退していった。
日本では、ソニー、キオクシア、ルネサス等の特定分野の半導体メーカーがシェアを維持している。
ソニーはカメラの撮像素子のトップシェア、キオクシアはNAND EEROMでそこそこ、ルネサスは撤退半導体メーカーの遺産を集め自動車部品を中心に生産を続けている。
最先端技術製品を提供するTSMC、Intel、Samsungが得意な高機能ロジック製品を提供できる企業は今や日本にはない。
プレステやNintendoも主要ロジック部品は、おそらくTSMC製品だと思います。
TSMCとSamusungが短期間で急成長したのは 2社ともApple製品の主要部品の受託生産を担ってきましたが、どうやって短期間に技術革新したのでしょう。
両国政府が投資及び財務支援した。
工場用地とインフラ、信用保証等様々な形で支援した。
製造メーカーが最新設備を提供した。
Nikon,東京エレクトロン、スクリーンなどの日本メーカーも含め。製造設備メーカーが最新設備の運用ノウハウを含め技術支援した。
日本人技術者が参画した。上記のような半導体市場の景気変動に耐えられず、見かけ経営数字のごまかし粉飾に、日本メーカーは多くの熟練エンジニアを3年程度の早期退職金上乗せで解雇した。
有能な優秀なエンジニアは設備メーカーの推薦を得て有利な条件で2年程、台湾や韓国のメーカーで高給をもって迎えられた。
また、日本企業に在籍したまま週末に韓国や台湾に指導しに行ったエンジニアも少なくなく、日本企業が蓄積した技術は簡単に移植されていった。
いまさら安全保障のために半導体は重要と言っても、企業である以上、技術者も生活がある以上、製造や開発の情報保全は簡単ではありません。
企業は生き抜くためにレイオフをして来ました。潤沢な投資資金を用意した海外企業は早期にキャッチアップし、半導体生産を立ち上げるために日本人技術者を好条件で雇い、最新設備とノウハウを高く買い上げシェアを奪いました。
かっての日本企業と政府が協業したことを、東方に学んだ国々が追い越していったわけです。
不断で果敢な設備投資、異端エンジニアと新技術開発、新分野開拓、不遇・不況に耐える胆力が海外のメーカーにはあったと言うべきでしょう。
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